ずんだもんと学ぶアナログ回路

第11回

周波数特性②:極・零点と多段回路

アナログ回路入門シリーズ第11回。回路図を見て、周波数特性の「極」と「零点」を読む方法を学び、オペアンプを2段にすると発振する理由まで見ます。

容量のインピーダンス1/(sC)からRCローパスの伝達関数を作り、分母が0になる点(極)をs平面に描いて、ボード線図(−20dB/dec、位相−45°→−90°)と対応させます。分子が0になる点(零点)も同じ見方で押さえます。

回路図からは、ノードごとの抵抗×容量(時定数)で極を見積もります。ソース接地回路のボード線図を、2つの極と右半平面零点を足して手で描き、帯域を決める主極(ドミナントポール)を時定数の和で求めます。

Cgdが極を押し広げる「極の分離(ポールスプリット)」を、極と零点が動く様子で確認します。

次に第4回の能動負荷の帯域を調べ、時定数が近いときは和で見積もる理由を見ます。第4回の回路を2つ並べた約1200倍の2段アンプでは、極は3つになります。

最後に、帰還をかけたときのループ利得T=βAと、位相が−180°になる周波数で|T|が1以上だと発振することを、ボード線図と時間波形で確認します。位相余裕と、主極を下げる補償容量の考え方(入口)までが今回の範囲です。

第10回の周波数特性①の続きで、次回はSKY130での実際のオペアンプ設計へつなぎます。

動画は近日公開(14:42)
  • 四国めたん(解説)
  • ずんだもん(質問)

1導入:2段にしたら発振した

ずんだもん

オペアンプを2段にしたら、利得は増えたのに、発振しちゃったのだ!

動画の画面(「オペアンプを2段にしたら、利得は増えたのに、発振しちゃったのだ!」の場面)
図 1

四国めたん

今日は周波数特性の2回目。回路図から極と零点を読んで、発振の理由まで見ていくわ。

動画の画面(「今日は周波数特性の2回目。回路図から極と零点を読んで、発振の理由まで見ていくわ。」の場面)
図 2

ずんだもん質問

よろしくなのだ!回路図を見ただけで、ボード線図が描けるのだ?

動画の画面(「よろしくなのだ!回路図を見ただけで、ボード線図が描けるのだ?」の場面)
図 3

四国めたん

熟練の設計者は、回路図を見ただけで、極と零点が見えるの。その読み方を身につけましょう。

動画の画面(「熟練の設計者は、回路図を見ただけで、極と零点が見えるの。その読み方を身につけましょう。」の場面)
図 4

2振り返り(第10回)

四国めたん

前回は、RSとCgsのローパスフィルタを見たわね。カットオフ周波数は約3.8GHzよ。

動画の画面(「前回は、RSとCgsのローパスフィルタを見たわね。カットオフ周波数は約3.8GHzよ。」の場面)
図 5

四国めたん

ボード線図は、利得と位相を対数の周波数で描く図。カットオフで−3dB、位相は−45°ね。

動画の画面(「ボード線図は、利得と位相を対数の周波数で描く図。カットオフで−3dB、位相は−45°ね。」の場面)
図 6

四国めたん

ソース接地の回路は、ミラー容量のせいで、帯域が約1.8GHzまで下がったわね。

ずんだもん質問

ところで「極」と「零点」って、何のことなのだ?

動画の画面(「ところで「極」と「零点」って、何のことなのだ?」の場面)
図 7

四国めたん

第8回でオペアンプの利得を1つの極で近似したでしょう。その極の正体を見るの。

動画の画面(「第8回でオペアンプの利得を1つの極で近似したでしょう。その極の正体を見るの。」の場面)
図 8

3極とは:伝達関数とs平面

四国めたん

ラプラス変換では、容量のインピーダンスは1/(sC)になるわ。

四国めたん:s=jωと置けば、前回の1/(jωC)ね。

動画の画面(「s=jωと置けば、前回の1/(jωC)ね。」の場面)
図 9

四国めたん

出力を入力で割った比を、伝達関数と呼ぶわ。RSとCgsの分圧なら、H(s)=1/(1+sRSCgs)ね。

四国めたん:注目するのは分母よ。分母が0になるsを、極と呼ぶの。

動画の画面(「注目するのは分母よ。分母が0になるsを、極と呼ぶの。」の場面)
図 10

四国めたん

分母1+sRSCgs=0を解くと、s=−1/(RSCgs)。ωp=1/(RSCgs)と置けば、極はs=−ωpの点ね。

四国めたん:sは複素数だから、平面に描けるわ。横軸が実部σ、縦軸がjω。これがs平面よ。

四国めたん:極は×で描くの。この極は負の実軸の上、−ωpの点。左半平面にあるわ。

動画の画面(「極は×で描くの。この極は負の実軸の上、−ωpの点。左半平面にあるわ。」の場面)
図 11

ずんだもん質問

分母が0って、割り算できないのだ!そんな点があって大丈夫なのだ?

動画の画面(「分母が0って、割り算できないのだ!そんな点があって大丈夫なのだ?」の場面)
図 12

四国めたん

正弦波のsは、縦のjω軸の上だけを動くの。だから左にある極には届かないわ。

動画の画面(「正弦波のsは、縦のjω軸の上だけを動くの。だから左にある極には届かないわ。」の場面)
図 13

四国めたん

でも極の近くを通ると、利得と位相が大きく変わるの。

動画の画面(「でも極の近くを通ると、利得と位相が大きく変わるの。」の場面)
図 14

四国めたん

ωpを2πで割った値を、極の周波数と呼ぶわ。この極は約3.8GHzね。

ずんだもん

3.8GHz!前回のカットオフ周波数と、同じなのだ!

動画の画面(「3.8GHz!前回のカットオフ周波数と、同じなのだ!」の場面)
図 15

四国めたん

そうよ。極が1つなら、極の周波数がカットオフ周波数になるの。

動画の画面(「そうよ。極が1つなら、極の周波数がカットオフ周波数になるの。」の場面)
図 16

4ボード線図で極と零点を読む

四国めたん

前回のボード線図で、極を読みましょう。極の周波数までは、利得はほぼ平らよ。

動画の画面(「前回のボード線図で、極を読みましょう。極の周波数までは、利得はほぼ平らよ。」の場面)
図 17

四国めたん

極の周波数から先は、利得が−20dB/decで下がるの。

四国めたん:decは10倍のこと。10倍ごとに、20dB下がるのよ。

四国めたん:位相は、極の周波数で−45°。十分高いと、−90°に近づくわ。

動画の画面(「位相は、極の周波数で−45°。十分高いと、−90°に近づくわ。」の場面)
図 18

四国めたん

次は分子よ。分子が0になるsは、零点と呼ぶわ。s平面では○で描くの。

動画の画面(「次は分子よ。分子が0になるsは、零点と呼ぶわ。s平面では○で描くの。」の場面)
図 19

ずんだもん質問

零点は、極と逆の働きなのだ?

四国めたん

そうよ。左半平面の零点は、+20dB/decで利得が上がり、位相は最大90°進むの。

四国めたん:伝達関数は因子のかけ算。大きさはdBにすると足し算になり、位相も各因子の和になるの。

動画の画面(「伝達関数は因子のかけ算。大きさはdBにすると足し算になり、位相も各因子の和になるの。」の場面)
図 20

四国めたん

極と零点が1つずつなら、−20と+20で傾きが打ち消し合って、また平らになるわ。

動画の画面(「極と零点が1つずつなら、−20と+20で傾きが打ち消し合って、また平らになるわ。」の場面)
図 21

5回路図から極を読む

四国めたん

実は、回路図を見るだけで、極が読めるの。ノードごとに、見える抵抗と容量を探すのよ。

動画の画面(「実は、回路図を見るだけで、極が読めるの。ノードごとに、見える抵抗と容量を探すのよ。」の場面)
図 22

ずんだもん質問

ノードって、どの点のことなのだ?

四国めたん

配線でつながった1つの点よ。ソース接地なら、ゲートとドレインの2つね。

四国めたん:この回路では、容量は3つあるけど、ノードは2つだから、極は2つよ。

四国めたん:ノードごとに、そのノードから見える抵抗×容量が時定数。極の周波数は、1/(2π×時定数)で見積もれるわ。

動画の画面(「ノードごとに、そのノードから見える抵抗×容量が時定数。極の周波数は、1/(2π×時定数)で見積もれるわ。」の場面)
図 23

四国めたん

入力ノードは、抵抗がRS=10 kΩ、容量はCgsとミラー容量を合わせて約8.2fF。約82psで、約1.9GHzの極ね。

動画の画面(「入力ノードは、抵抗がRS=10kΩ、容量はCgsとミラー容量を合わせて約8.2fF。約82psで、約1.9GHzの極ね。」の場面)
図 24

四国めたん

出力ノードは、抵抗が約4.6 kΩ、容量が約2.8fF。約13psで、約12GHzの極ね。

動画の画面(「出力ノードは、抵抗が約4.6kΩ、容量が約2.8fF。約13psで、約12GHzの極ね。」の場面)
図 25

四国めたん

数値で解くと、極は約1.8GHzと約23GHz。低いほうはほぼ合って、高いほうは目安ね。

ずんだもん質問

高いほうは、ずいぶんずれたのだ?

動画の画面(「高いほうは、ずいぶんずれたのだ?」の場面)
図 26

四国めたん

そうね。でも帯域を決めるのは低いほう。ずれる理由は、あとの「極の分離」で分かるわ。

動画の画面(「そうね。でも帯域を決めるのは低いほう。ずれる理由は、あとの「極の分離」で分かるわ。」の場面)
図 27

6手で描く:極・零点を足していく(右半平面零点)

四国めたん

読み取った極と零点で、ボード線図を描きましょう。低い周波数の利得は約12dBよ。

動画の画面(「読み取った極と零点で、ボード線図を描きましょう。低い周波数の利得は約12dBよ。」の場面)
図 28

四国めたん

1つ目の極、約1.8GHzから、−20dB/decで下がるの。

四国めたん:位相は、−45°から−90°へ向かうわ。

四国めたん:2つ目の極、約23GHzから、−40dB/decで下がるの。

動画の画面(「2つ目の極、約23GHzから、−40dB/decで下がるの。」の場面)
図 29

四国めたん

位相は、さらに−180°へ向かうわ。

四国めたん:零点ができるのは、ゲートから出力へ信号の道が2本あるからよ。Cgdを通る道と、gm·vgの電流の道ね。

ずんだもん質問

道が2本あると、どうして零点ができるのだ?

四国めたん

2つの道の電流が打ち消し合うと、出力は0になるわ。それがs=gm/Cgdのときよ。

動画の画面(「2つの道の電流が打ち消し合うと、出力は0になるわ。それがs=gm/Cgdのときよ。」の場面)
図 30

ずんだもん

sがプラスの実数なのだ?s平面の右側なのだ!

動画の画面(「sがプラスの実数なのだ?s平面の右側なのだ!」の場面)
図 31

四国めたん

そう、右半平面零点よ。位置を周波数で表すと、gm/(2πCgd)で約173GHzね。

動画の画面(「そう、右半平面零点よ。位置を周波数で表すと、gm/(2πCgd)で約173GHzね。」の場面)
図 32

四国めたん

jω軸の上ではないから、173GHzの正弦波で出力が0になるわけではないわ。

動画の画面(「jω軸の上ではないから、173GHzの正弦波で出力が0になるわけではないわ。」の場面)
図 33

ずんだもん質問

右側にあると、左側の零点と何がちがうのだ?

動画の画面(「右側にあると、左側の零点と何がちがうのだ?」の場面)
図 34

四国めたん

傾きは左半平面の零点と同じ+20dB/dec。でも位相は、極と同じように遅れるの。

動画の画面(「傾きは左半平面の零点と同じ+20dB/dec。でも位相は、極と同じように遅れるの。」の場面)
図 35

ずんだもん

利得は上向きなのに、位相は遅れるのだ?いいところがないのだ!

四国めたん

この回路では173GHzと十分高いから、帯域の近くでは、ほとんど効かないわ。

動画の画面(「この回路では173GHzと十分高いから、帯域の近くでは、ほとんど効かないわ。」の場面)
図 36

四国めたん

前回、−3dBの点で約50°遅れたわね。内訳は、極が約45°と約4.5°、零点が約0.6°よ。

動画の画面(「前回、−3dBの点で約50°遅れたわね。内訳は、極が約45°と約4.5°、零点が約0.6°よ。」の場面)
図 37

ずんだもん

45°より多かった分は、2つ目の極と零点だったのだ!

7主極と時定数の和

ずんだもん質問

帯域を決める低いほうの極は、もっと正確に手で見積もれないのだ?

動画の画面(「帯域を決める低いほうの極は、もっと正確に手で見積もれないのだ?」の場面)
図 38

四国めたん

分母を1+bs+as²と書くと、b=1/ωp1+1/ωp2になるの。ωp1は低いほうの極よ。2つの極が十分離れていれば、bはほぼ1/ωp1ね。

動画の画面(「分母を1+bs+as²と書くと、b=1/ωp1+1/ωp2になるの。ωp1は低いほうの極よ。2つの極が十分離れていれば、bはほぼ1/ωp1ね。」の場面)
図 39

四国めたん

つまり、bが分かれば、低いほうの極ωp1がほぼ分かるの。

四国めたん:そしてbは、各ノードの抵抗と容量の積、つまり時定数の和になっているの。

動画の画面(「そしてbは、各ノードの抵抗と容量の積、つまり時定数の和になっているの。」の場面)
図 40

四国めたん

入力ノードは、ミラー容量で約82ps。出力ノードは約13ps。和は約95psね。

動画の画面(「入力ノードは、ミラー容量で約82ps。出力ノードは約13ps。和は約95psね。」の場面)
図 41

四国めたん

1/(2π×95ps)で、約1.7GHz。数値で求めた極の1.8GHzに近いわ。

四国めたん:前回の入力ノードだけの見積もり約1.9GHzは少し高め。和で見積もった1.7GHzは、本物の極より必ず少し低めに出るの。本物はその間よ。

動画の画面(「前回の入力ノードだけの見積もり約1.9GHzは少し高め。和で見積もった1.7GHzは、本物の極より必ず少し低めに出るの。本物はその間よ。」の場面)
図 42

ずんだもん質問

主極って、何が主なのだ?

四国めたん

いちばん低く、利得を最初に折り曲げる極よ。帯域をほぼ決める主極、ドミナントポールね。

動画の画面(「いちばん低く、利得を最初に折り曲げる極よ。帯域をほぼ決める主極、ドミナントポールね。」の場面)
図 43

8極の分離(ポールスプリット)

四国めたん

Cgdを外すと、極は約3.8GHzと約17GHzよ。

動画の画面(「Cgdを外すと、極は約3.8GHzと約17GHzよ。」の場面)
図 44

四国めたん

Cgdを外した回路の帯域は、前回見たとおり約3.6GHz。これは極ではなく帯域で、第2の極も少し効くぶん、極の3.8GHzより低いの。

四国めたん:Cgdを入れると、極は約1.8GHzと約23GHzになるわ。

ずんだもん

低い極は下がって、高い極は上がったのだ!離れていくのだ!

動画の画面(「低い極は下がって、高い極は上がったのだ!離れていくのだ!」の場面)
図 45

四国めたん

入力と出力をつなぐ容量で、極が押し広げられる。これを極の分離、ポールスプリットと呼ぶわ。

動画の画面(「入力と出力をつなぐ容量で、極が押し広げられる。これを極の分離、ポールスプリットと呼ぶわ。」の場面)
図 46

四国めたん

Cgdに当たる容量を0から6.4fFまで増やすと、低い極は約3.8GHzから0.4GHzまで下がり、高い極は約17GHzから28GHzまで上がるの。右半平面零点も約22GHzまで近づいてくるわ。

動画の画面(「Cgdに当たる容量を0から6.4fFまで増やすと、低い極は約3.8GHzから0.4GHzまで下がり、高い極は約17GHzから28GHzまで上がるの。右半平面零点も約22GHzまで近づいてくるわ。」の場面)
図 47

ずんだもん質問

どうして、低い極は下がって、高い極は上がるのだ?

四国めたん

入力側の極は、ミラー効果で容量が大きく見えるから、下がるの。

動画の画面(「入力側の極は、ミラー効果で容量が大きく見えるから、下がるの。」の場面)
図 48

四国めたん

出力側では、Cgdを通して、ゲートが出力の動きに少しだけついていくの。

動画の画面(「出力側では、Cgdを通して、ゲートが出力の動きに少しだけついていくの。」の場面)
図 49

四国めたん

するとgmの電流が、出力の変化を打ち消して、見える抵抗が約2.8 kΩに下がるの。

四国めたん:極が上がるのは、そのせいよ。

9能動負荷の帯域

四国めたん

前回の最後に出た、第4回の能動負荷を見ましょう。利得は約35倍、出力の抵抗は約54 kΩよ。

動画の画面(「前回の最後に出た、第4回の能動負荷を見ましょう。利得は約35倍、出力の抵抗は約54kΩよ。」の場面)
図 50

四国めたん

出力には、負荷M2のCdbとCgdも加わるわ。PMOSの容量はNMOSと同じ値とし、M2のゲートは交流的にはグラウンドと見なすの。

動画の画面(「出力には、負荷M2のCdbとCgdも加わるわ。PMOSの容量はNMOSと同じ値とし、M2のゲートは交流的にはグラウンドと見なすの。」の場面)
図 51

四国めたん

入力ノードは、ミラー容量が大きくて約330ps。出力ノードも、抵抗が大きくて約300psよ。

動画の画面(「入力ノードは、ミラー容量が大きくて約330ps。出力ノードも、抵抗が大きくて約300psよ。」の場面)
図 52

ずんだもん

2つのノードの時定数が、同じくらいなのだ!

四国めたん

だから、大きいほうだけでは決まらないの。和の約630psで見積もると、約250MHzよ。

四国めたん:前回の「飛び抜けて大きい時定数が決める」は、和がほぼ大きいほうに等しい、特別な場合ね。

動画の画面(「前回の「飛び抜けて大きい時定数が決める」は、和がほぼ大きいほうに等しい、特別な場合ね。」の場面)
図 53

四国めたん

数値で解くと、帯域は約260MHz。第10回の1.8GHzの、約7分の1よ。

動画の画面(「数値で解くと、帯域は約260MHz。第10回の1.8GHzの、約7分の1よ。」の場面)
図 54

四国めたん

時定数は近いのに、Cgdの極の分離で、極は約260MHzと約6.6GHzに離れるの。

動画の画面(「時定数は近いのに、Cgdの極の分離で、極は約260MHzと約6.6GHzに離れるの。」の場面)
図 55

四国めたん

利得のために出力の抵抗を大きくすると、時定数の和も増えて、主極が下がるのね。

動画の画面(「利得のために出力の抵抗を大きくすると、時定数の和も増えて、主極が下がるのね。」の場面)
図 56

102段アンプの極

ずんだもん質問

もっとオペアンプの利得が欲しいときは、どうするのだ?

動画の画面(「もっとオペアンプの利得が欲しいときは、どうするのだ?」の場面)
図 57

四国めたん

段を足して、掛け算で稼ぐの。第4回の回路を2つ並べると、約35×35で約1200倍よ。

動画の画面(「段を足して、掛け算で稼ぐの。第4回の回路を2つ並べると、約35×35で約1200倍よ。」の場面)
図 58

ずんだもん

1200倍なのだ!…でもボクの回路は、これで発振したのだ。

四国めたん

第5回のバッファと同じく、段の間の直流はそろえてあるとして、小信号だけを見るわ。

四国めたん:容量のつながったノードが3つだから、極も3つあるわ。

動画の画面(「容量のつながったノードが3つだから、極も3つあるわ。」の場面)
図 59

四国めたん

段の間のノードには、1段目の出力の容量が約5.6fF、2段目のCgsが4.2fF、2段目のミラー容量が約29fF。合わせて約39fFで、54 kΩとの時定数は約2.1nsにもなるの。

動画の画面(「段の間のノードには、1段目の出力の容量が約5.6fF、2段目のCgsが4.2fF、2段目のミラー容量が約29fF。合わせて約39fFで、54kΩとの時定数は約2.1nsにもなるの。」の場面)
図 60

四国めたん

ほかのノードも足すと約2.7ns。見積もりは約58MHzで、数値で解くと約61MHzよ。

動画の画面(「ほかのノードも足すと約2.7ns。見積もりは約58MHzで、数値で解くと約61MHzよ。」の場面)
図 61

四国めたん

第8回で1つの極で近似したのは、この段の間のノードの主極よ。

四国めたん:極は3つ。約62MHz、約1.4GHz、約5.6GHzよ。ボード線図に1つずつ足していくと、傾きが−20、−40、−60dB/decと急になっていくわ。

動画の画面(「極は3つ。約62MHz、約1.4GHz、約5.6GHzよ。ボード線図に1つずつ足していくと、傾きが−20、−40、−60dB/decと急になっていくわ。」の場面)
図 62

四国めたん

3つの極の遅れが重なって、位相は約2.7GHzで−180°に達するわ。そこでも利得は約11倍、21dBもあるの。

四国めたん:極が増えるたびに、位相の遅れも増えるの。1つで最大90°、3つなら最大270°ね。

動画の画面(「極が増えるたびに、位相の遅れも増えるの。1つで最大90°、3つなら最大270°ね。」の場面)
図 63

11帰還をかけると、なぜ発振するのか(入口)

ずんだもん質問

位相が180°遅れると、何が困るのだ?

動画の画面(「位相が180°遅れると、何が困るのだ?」の場面)
図 64

四国めたん

オペアンプに帰還をかけた回路よ。出力のβ倍が入力側へ戻り、入力との差が増幅されるの。

動画の画面(「オペアンプに帰還をかけた回路よ。出力のβ倍が入力側へ戻り、入力との差が増幅されるの。」の場面)
図 65

四国めたん

回路を一周したときの利得を、ループ利得Tと呼ぶわ。T=βAよ。くわしい式は第13回ね。

動画の画面(「回路を一周したときの利得を、ループ利得Tと呼ぶわ。T=βAよ。くわしい式は第13回ね。」の場面)
図 66

四国めたん

低い周波数では、戻った信号は入力を打ち消す向き。出力の変動が抑えられるわ。これが負帰還ね。

動画の画面(「低い周波数では、戻った信号は入力を打ち消す向き。出力の変動が抑えられるわ。これが負帰還ね。」の場面)
図 67

四国めたん

でも位相が180°遅れると、符号が逆になるの。戻った信号が、入力と同じ向きに足されてしまうわ。

ずんだもん

打ち消すはずの信号が、逆に足されちゃうのだ!

四国めたん

−180°では、一周するたびに信号が|T|倍。|T|が1より大きいと、ふくらみ続けるわ。

動画の画面(「−180°では、一周するたびに信号が|T|倍。|T|が1より大きいと、ふくらみ続けるわ。」の場面)
図 68

四国めたん

だから安定の条件は、位相が−180°になる周波数で、|T|が1より小さいことよ。

動画の画面(「だから安定の条件は、位相が−180°になる周波数で、|T|が1より小さいことよ。」の場面)
図 69

四国めたん

ボード線図で見ましょう。目安は、T=1の周波数が−180°の周波数より低ければ、安定よ。

動画の画面(「ボード線図で見ましょう。目安は、T=1の周波数が−180°の周波数より低ければ、安定よ。」の場面)
図 70

四国めたん

利得1倍のバッファはβ=1で、TはAそのもの。−180°の周波数で、Tは約11よ。

四国めたん:−180°の周波数は約2.7GHz。T=1の周波数は約7.8GHzで、ずっと高いわ。

ずんだもん質問

利得を20倍にすると、何が変わるのだ?

四国めたん

βを0.05にすると、Tは全体に26dB下がり、−180°の周波数では約0.57よ。

動画の画面(「βを0.05にすると、Tは全体に26dB下がり、−180°の周波数では約0.57よ。」の場面)
図 71

四国めたん

T=1の周波数は約2.0GHz。−180°の約2.7GHzより低いから、安定ね。

四国めたん:時間波形で見ると、利得1倍の回路は、入力を少し変えただけで、揺れがどんどん大きくなるわ。

動画の画面(「時間波形で見ると、利得1倍の回路は、入力を少し変えただけで、揺れがどんどん大きくなるわ。」の場面)
図 72

四国めたん

利得20倍の回路は、揺れながらも、最後には落ち着くの。

動画の画面(「利得20倍の回路は、揺れながらも、最後には落ち着くの。」の場面)
図 73

ずんだもん

ボクのオペアンプが発振したのは、位相が180°回ったところで、Tがまだ1以上だったからなのだ!

四国めたん

−180°までの余裕を、位相余裕と呼ぶわ。T=1の周波数で、あと何度残っているかよ。

動画の画面(「−180°までの余裕を、位相余裕と呼ぶわ。T=1の周波数で、あと何度残っているかよ。」の場面)
図 74

四国めたん

利得20倍の回路は約15°。余裕が小さいから、揺れが長く続いたの。

四国めたん:直すには、主極をもっと下げて、T=1の周波数を下げるの。そのための容量を、補償容量と呼ぶわ。

ずんだもん

主極を下げたら、利得が早く下がってしまうのだ。

動画の画面(「主極を下げたら、利得が早く下がってしまうのだ。」の場面)
図 75

四国めたん

そうよ。その代わり、位相が回りきる前に、T=1になるの。安定のために、帯域を手放すのね。

動画の画面(「そうよ。その代わり、位相が回りきる前に、T=1になるの。安定のために、帯域を手放すのね。」の場面)
図 76

四国めたん

説明のため、段の間からグラウンドへ10pFを足すと、T=1は約310MHzに下がるわ。

動画の画面(「説明のため、段の間からグラウンドへ10pFを足すと、T=1は約310MHzに下がるわ。」の場面)
図 77

四国めたん

位相余裕は約54°。利得1倍でも、安定よ。

四国めたん:波形も、行き過ぎが小さく、すぐに落ち着くわ。

動画の画面(「波形も、行き過ぎが小さく、すぐに落ち着くわ。」の場面)
図 78

四国めたん

本物は、第8回のように、Ccを2段目の入力と出力の間に入れるの。

四国めたん:2段目の利得が約35倍だから、ミラー効果でCcは約36倍に見えるの。約0.28pFで、さっきの10pFと同じ主極になるわ。

動画の画面(「2段目の利得が約35倍だから、ミラー効果でCcは約36倍に見えるの。約0.28pFで、さっきの10pFと同じ主極になるわ。」の場面)
図 79

四国めたん

そのうえ、極の分離も起きるのよ。

動画の画面(「そのうえ、極の分離も起きるのよ。」の場面)
図 80

ずんだもん質問

Cgdと同じ場所なら、右半平面零点もできるのだ?

四国めたん

そうよ。零点はgm/(2π(Cc+Cgd))。Ccが大きいぶん約370MHzまで下がって、T=1の周波数より低くなるから、このままでは位相余裕がほぼ残らないの。

四国めたん:今日は、発振の条件と、補償の考え方まで。零点の対策と容量の決め方は第14回よ。

動画の画面(「今日は、発振の条件と、補償の考え方まで。零点の対策と容量の決め方は第14回よ。」の場面)
図 81

12まとめ

四国めたん

まとめましょう。ノードごとの抵抗×容量の和から、主極が読めるわ。

四国めたん:極が1つ増えるごとに、傾きは−20dB/decずつ急になり、位相は最大90°ずつ遅れるの。零点は逆よ。

動画の画面(「極が1つ増えるごとに、傾きは−20dB/decずつ急になり、位相は最大90°ずつ遅れるの。零点は逆よ。」の場面)
図 82

四国めたん

ただし右半平面零点は、利得が上がるのに、位相は遅れるわ。

四国めたん:極が増えると、位相が−180°まで回るわ。その周波数でTが1以上だと、発振するの。

ずんだもん

主極は時定数の和で見積もれて、主極を下げる補償容量で、発振を止められるのだ!

動画の画面(「主極は時定数の和で見積もれて、主極を下げる補償容量で、発振を止められるのだ!」の場面)
図 83

ずんだもん

回路図から極を読んで、発振の理由もレポートに書けるのだ!

動画の画面(「回路図から極を読んで、発振の理由もレポートに書けるのだ!」の場面)
図 84

四国めたん

次回は第12回。SKY130で、実際にオペアンプを設計してみましょう。

動画の画面(「次回は第12回。SKY130で、実際にオペアンプを設計してみましょう。」の場面)
図 85

ずんだもん

最後まで読んでくれてありがとうなのだ!

容量・信号源抵抗・補償容量10 pFは、180 nm CMOSくらいを想定した説明用の仮の値です。PMOSの容量はNMOSと同じ値と仮定しています。 2段の増幅回路は第4回の能動負荷ソース接地を2つつないだ説明用のモデルで、第8回・第12回の差動入力の2段オペアンプとは別物です。 段の間の直流電位は合っているものとして小信号だけを扱い、帰還の割合βは理想的に戻るとしています。 「T=1の周波数が−180°の周波数より低ければ安定」は、利得が周波数とともに単調に下がる回路での目安です。 帰還の安定性は入口だけを扱い、ループ利得の式は第13回、補償容量の設計は第14回で扱います。

動画のクレジット

  • VOICEVOX:ずんだもん
  • VOICEVOX:四国めたん
  • 立ち絵:坂本アヒル