ずんだもんと学ぶアナログ回路

第7回

差動対

アナログ回路入門シリーズ第7回です。マイクのノイズが消えない……2つの入力の「差」だけを増幅する差動対で解決できるのか見ていきます。

尾電流源つきの差動対の大信号特性、差動信号と同相信号への分解、差動と同相の半回路、同相利得とCMRR、そしてカレントミラー負荷の差動対で差動→単相に変換する方法を解説します。

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  • 四国めたん(解説)
  • ずんだもん(質問)

1導入:マイクのノイズが消えない

ずんだもん

実験がピンチなのだ!マイクの信号を増幅したら、ノイズまで大きくなって消えないのだ。

動画の画面(「実験がピンチなのだ!マイクの信号を増幅したら、ノイズまで大きくなって消えないのだ。」の場面)
図 1

四国めたん

そんなときの定番が差動対。オペアンプの入力も、ほとんどがこの形なのよ。

動画の画面(「そんなときの定番が差動対。オペアンプの入力も、ほとんどがこの形なのよ。」の場面)
図 2

ずんだもん

よろしくなのだ!ノイズの消し方を知りたいのだ!

動画の画面(「よろしくなのだ!ノイズの消し方を知りたいのだ!」の場面)
図 3

2なぜ差動か

四国めたん

現実の回路では、電源やグラウンドの電圧が、雑音で少し揺れるの。

動画の画面(「現実の回路では、電源やグラウンドの電圧が、雑音で少し揺れるの。」の場面)
図 4

四国めたん

第4回の能動負荷のソース接地は、入力の直流が10 mVずれると、出力が約0.35 Vも動いたわね。

ずんだもん質問

信号源と増幅回路のグラウンドが、10 mVずれたらどうなるのだ?

動画の画面(「信号源と増幅回路のグラウンドが、10mVずれたらどうなるのだ?」の場面)
図 5

四国めたん

入力に10 mVのずれが加わるのと同じよ。だから入力を2本にして、差だけを増幅しましょう。

動画の画面(「入力に10mVのずれが加わるのと同じよ。だから入力を2本にして、差だけを増幅しましょう。」の場面)
図 6

四国めたん

揺れが両方の入力に同じように乗るなら、差をとれば消えるわ。

ずんだもん

両方が同じだけずれても、差は変わらないのだ!

3差動対の回路

四国めたん

同じNMOSのM1とM2を並べて、ソースどうしをつなぐの。この点をPと呼ぶわ。

動画の画面(「同じNMOSのM1とM2を並べて、ソースどうしをつなぐの。この点をPと呼ぶわ。」の場面)
図 7

四国めたん

Pから一定の電流ISSを引き抜くの。この電流源を、尾電流源と呼ぶわ。

動画の画面(「Pから一定の電流ISSを引き抜くの。この電流源を、尾電流源と呼ぶわ。」の場面)
図 8

四国めたん

ドレインにはRD。入力はVIN1・VIN2、出力はVOUT1・VOUT2よ。

動画の画面(「ドレインにはRD。入力はVIN1・VIN2、出力はVOUT1・VOUT2よ。」の場面)
図 9

四国めたん

VDD=1.8 V、ISS=0.2 mA、RD=5 kΩ。入力の直流は、どちらも1.3 Vよ。

動画の画面(「VDD=1.8V、ISS=0.2mA、RD=5kΩ。入力の直流は、どちらも1.3Vよ。」の場面)
図 10

四国めたん

基板はグラウンド。ソースのPは約0.49 Vで基板と電位が違うから、基板バイアス効果も入れて解くわ。

動画の画面(「基板はグラウンド。ソースのPは約0.49Vで基板と電位が違うから、基板バイアス効果も入れて解くわ。」の場面)
図 11

四国めたん

2つの入力が等しければ、左右対称。電流は半分ずつ、0.1 mAね。

動画の画面(「2つの入力が等しければ、左右対称。電流は半分ずつ、0.1mAね。」の場面)
図 12

4大信号特性

ずんだもん質問

入力に差をつけると、どうなるのだ?

動画の画面(「入力に差をつけると、どうなるのだ?」の場面)
図 13

四国めたん

Pで電流を足すと、ID1+ID2=ISS。合計は、いつも0.2 mAなの。

動画の画面(「Pで電流を足すと、ID1+ID2=ISS。合計は、いつも0.2mAなの。」の場面)
図 14

四国めたん

VIN1を上げるとM1の電流が増えて、そのぶん、M2の電流が減るのよ。

動画の画面(「VIN1を上げるとM1の電流が増えて、そのぶん、M2の電流が減るのよ。」の場面)
図 15

四国めたん

入力の差ΔVin=VIN1−VIN2を横軸に、電流の差ΔID=ID1−ID2を描くと、下の図のようになるわ。

動画の画面(「入力の差ΔVin=VIN1−VIN2を横軸に、電流の差ΔID=ID1−ID2を描くと、下の図のようになるわ。」の場面)
図 16

四国めたん

0の近くは、ほぼ直線。M1の電流が+gm·ΔVin/2、M2が−gm·ΔVin/2だけ変わるから、差ΔIDの傾きは約gmよ。

動画の画面(「0の近くは、ほぼ直線。M1の電流が+gm·ΔVin/2、M2が−gm·ΔVin/2だけ変わるから、差ΔIDの傾きは約gmよ。」の場面)
図 17

四国めたん

差が大きくなると、M2はほぼオフ。電流のほとんどがM1に流れるの。

動画の画面(「差が大きくなると、M2はほぼオフ。電流のほとんどがM1に流れるの。」の場面)
図 18

四国めたん

二乗則なら、片側がオフになる目安は√2·Vov、約0.43 Vよ。

動画の画面(「二乗則なら、片側がオフになる目安は√2·Vov、約0.43Vよ。」の場面)
図 19

四国めたん

Vovは釣り合ったときの約0.30 V。このモデルでは0.43 Vでも、少し電流が残るわ。

動画の画面(「Vovは釣り合ったときの約0.30V。このモデルでは0.43Vでも、少し電流が残るわ。」の場面)
図 20

ずんだもん

差が大きいと、電流を左右に切り替えるスイッチになるのだ!

動画の画面(「差が大きいと、電流を左右に切り替えるスイッチになるのだ!」の場面)
図 21

四国めたん

逆に、2つの入力を一緒に動かすと、Pがついて動くだけ。電流は半分ずつのままよ。

動画の画面(「逆に、2つの入力を一緒に動かすと、Pがついて動くだけ。電流は半分ずつのままよ。」の場面)
図 22

5差動信号と同相信号

四国めたん

ここからは小信号。2つの入力vin1とvin2を、2つの成分に分けるの。

動画の画面(「ここからは小信号。2つの入力vin1とvin2を、2つの成分に分けるの。」の場面)
図 23

四国めたん

差動信号vid=vin1−vin2、同相信号vic=(vin1+vin2)/2よ。

四国めたん:逆に、vin1=vic+vid/2、vin2=vic−vid/2と書けるの。

動画の画面(「逆に、vin1=vic+vid/2、vin2=vic−vid/2と書けるの。」の場面)
図 24

ずんだもん

線形回路だから、重ね合わせで、別々に解けばいいのだ!

動画の画面(「線形回路だから、重ね合わせで、別々に解けばいいのだ!」の場面)
図 25

6差動の半回路と差動利得

四国めたん

まず差動だけ。M1のゲートには+vid/2、M2のゲートには−vid/2が入るわ。

動画の画面(「まず差動だけ。M1のゲートには+vid/2、M2のゲートには−vid/2が入るわ。」の場面)
図 26

四国めたん

左右対称で、入力は逆向きの小信号。Pを動かす作用が打ち消し合って、Pの小信号は0なの。

動画の画面(「左右対称で、入力は逆向きの小信号。Pを動かす作用が打ち消し合って、Pの小信号は0なの。」の場面)
図 27

四国めたん

小信号で見ると、Pはグラウンドと同じ。これを仮想接地と呼ぶわ。

動画の画面(「小信号で見ると、Pはグラウンドと同じ。これを仮想接地と呼ぶわ。」の場面)
図 28

四国めたん

左半分を取り出すと、第3回のソース接地そのもの。これが差動の半回路よ。

動画の画面(「左半分を取り出すと、第3回のソース接地そのもの。これが差動の半回路よ。」の場面)
図 29

四国めたん

ソースが動かないので、基板バイアス効果の項も出てこないわ。

動画の画面(「ソースが動かないので、基板バイアス効果の項も出てこないわ。」の場面)
図 30

四国めたん

vout1=−gm(RD∥ro)·vid/2。vout2は符号が逆だから、差は2倍ね。

動画の画面(「vout1=−gm(RD∥ro)·vid/2。vout2は符号が逆だから、差は2倍ね。」の場面)
図 31

四国めたん

出力の差で見た差動利得は約−3.1。式はAdm=−gm(RD∥ro)で、大信号特性の0付近の傾きとも合うわ。

ずんだもん

入力が半分ずつでも、差をとれば、ソース接地1個分の利得なのだ!

動画の画面(「入力が半分ずつでも、差をとれば、ソース接地1個分の利得なのだ!」の場面)
図 32

7同相の半回路と同相利得

四国めたん

次は同相。両方のゲートに同じvicを入れて、片側の出力で利得を求めるわ。

動画の画面(「次は同相。両方のゲートに同じvicを入れて、片側の出力で利得を求めるわ。」の場面)
図 33

四国めたん

尾電流源が理想なら、電流は変わらない。出力も動かないから、Acm=0ね。

動画の画面(「尾電流源が理想なら、電流は変わらない。出力も動かないから、Acm=0ね。」の場面)
図 34

四国めたん

でも本物の尾電流源は、第4回のミラー。出力抵抗RSSを持つの。

動画の画面(「でも本物の尾電流源は、第4回のミラー。出力抵抗RSSを持つの。」の場面)
図 35

四国めたん

尾電流源のNMOSをM5と呼ぶわ。W/Lを第4回の2倍にして0.2 mAを流すと、RSSはM5のro、約47 kΩよ。

動画の画面(「尾電流源のNMOSをM5と呼ぶわ。W/Lを第4回の2倍にして0.2mAを流すと、RSSはM5のro、約47kΩよ。」の場面)
図 36

四国めたん

RSSを、2RSSの2本の並列に分けるわ。対称だから、間の線には電流が流れないの。

動画の画面(「RSSを、2RSSの2本の並列に分けるわ。対称だから、間の線には電流が流れないの。」の場面)
図 37

四国めたん

線を切ると、ソースに2RSSがついたソース接地。これが同相の半回路よ。

動画の画面(「線を切ると、ソースに2RSSがついたソース接地。これが同相の半回路よ。」の場面)
図 38

ずんだもん質問

ソースに抵抗があると、どうなるのだ?

四国めたん

基板を無視すると、ソースが入力と同じvicだけ動くの。だから2RSSを流れる電流、つまりドレイン電流が、vic/(2RSS)だけ変わるわ。

動画の画面(「基板を無視すると、ソースが入力と同じvicだけ動くの。だから2RSSを流れる電流、つまりドレイン電流が、vic/(2RSS)だけ変わるわ。」の場面)
図 39

四国めたん

だから、Acm≈−RD/(2RSS)=約−0.053。基板バイアス効果の分も入れると、約−0.044よ。

動画の画面(「だから、Acm≈−RD/(2RSS)=約−0.053。基板バイアス効果の分も入れると、約−0.044よ。」の場面)
図 40

四国めたん

両方の出力が同じだけ動くから、出力の差をとれば、ちゃんと消えるわ。

動画の画面(「両方の出力が同じだけ動くから、出力の差をとれば、ちゃんと消えるわ。」の場面)
図 41

8CMRR

四国めたん

差動利得と同相利得を同じ出力で測った比を、CMRR、同相除去比と呼ぶの。

四国めたん:片側の出力で比べると、差動利得は半分の約1.5。CMRRは約35倍ね。

動画の画面(「片側の出力で比べると、差動利得は半分の約1.5。CMRRは約35倍ね。」の場面)
図 42

四国めたん

基板効果を省いた目安は、(gm·RD/2)÷(RD/(2RSS))=gm·RSS。尾電流源の出力抵抗で決まるのよ。

動画の画面(「基板効果を省いた目安は、(gm·RD/2)÷(RD/(2RSS))=gm·RSS。尾電流源の出力抵抗で決まるのよ。」の場面)
図 43

四国めたん

もっと大きくするなら、RSSを大きくする。第6回のカスコード電流源の出番ね。

動画の画面(「もっと大きくするなら、RSSを大きくする。第6回のカスコード電流源の出番ね。」の場面)
図 44

四国めたん

ただし、尾電流源が電圧の余裕を使うぶん、入力の直流を高くする必要があるわ。

9能動負荷の差動対

ずんだもん質問

次の回路に、出力を1本で渡したいときは、どうするのだ?

動画の画面(「次の回路に、出力を1本で渡したいときは、どうするのだ?」の場面)
図 45

四国めたん

片側だけでは利得が半分。そこで、第4回のPMOSミラーを負荷にするの。

動画の画面(「片側だけでは利得が半分。そこで、第4回のPMOSミラーを負荷にするの。」の場面)
図 46

四国めたん

M3がM1の電流を受けて、M4が写すの。出力はM2とM4のドレインよ。

動画の画面(「M3がM1の電流を受けて、M4が写すの。出力はM2とM4のドレインよ。」の場面)
図 47

四国めたん

素子がそろって入力が等しいと、両側のドレインはどちらも、VDDからM3のVSG約0.83 Vを引いた約0.97 Vになるの。

動画の画面(「素子がそろって入力が等しいと、両側のドレインはどちらも、VDDからM3のVSG約0.83Vを引いた約0.97Vになるの。」の場面)
図 48

四国めたん

vidでM1の電流が増えると、M4がそれを写して、出力に電流を押し込むわ。

動画の画面(「vidでM1の電流が増えると、M4がそれを写して、出力に電流を押し込むわ。」の場面)
図 49

四国めたん

同時に、M2が引き抜く電流は減る。どちらも、出力を上げる向きに働くの。

動画の画面(「同時に、M2が引き抜く電流は減る。どちらも、出力を上げる向きに働くの。」の場面)
図 50

四国めたん

左右の電流の変化が、1本の出力に集まる。シングルエンド出力への変換よ。

動画の画面(「左右の電流の変化が、1本の出力に集まる。シングルエンド出力への変換よ。」の場面)
図 51

四国めたん

左右から出力に集まる電流は合わせてgm·vid、出力から見た抵抗はro2∥ro4。だから利得はAv≈gm(ro2∥ro4)になるわ。

動画の画面(「左右から出力に集まる電流は合わせてgm·vid、出力から見た抵抗はro2∥ro4。だから利得はAv≈gm(ro2∥ro4)になるわ。」の場面)
図 52

ずんだもん

第4回の能動負荷と、同じ形なのだ!

動画の画面(「第4回の能動負荷と、同じ形なのだ!」の場面)
図 53

四国めたん

ええ。ただ第4回と違って、今回は非反転。VIN1が上がると出力も上がるの。

動画の画面(「ええ。ただ第4回と違って、今回は非反転。VIN1が上がると出力も上がるの。」の場面)
図 54

四国めたん

利得は約+31。抵抗負荷で出力の差をとった場合の、約10倍よ。

動画の画面(「利得は約+31。抵抗負荷で出力の差をとった場合の、約10倍よ。」の場面)
図 55

四国めたん

同相で2つの電流が同じだけ変わっても、M4が写す分とM2の分が出力で打ち消し合うの。尾電流源をM5にしても、入力が0.1 V一緒に動いたときの出力の変化は約2 mVよ。

動画の画面(「同相で2つの電流が同じだけ変わっても、M4が写す分とM2の分が出力で打ち消し合うの。尾電流源をM5にしても、入力が0.1V一緒に動いたときの出力の変化は約2mVよ。」の場面)
図 56

ずんだもん質問

第4回の、動作点がずれやすい問題も、これで解決なのだ?

動画の画面(「第4回の、動作点がずれやすい問題も、これで解決なのだ?」の場面)
図 57

四国めたん

同相のずれには強くなるわ。でも入力の直流は、約1.07〜1.50 Vの範囲に置く必要があるの。

四国めたん:低い側では尾電流源M5のドレイン電圧の余裕が減って、RSSが下がる。高い側ではM1のドレイン電圧の余裕がなくなるの。

動画の画面(「低い側では尾電流源M5のドレイン電圧の余裕が減って、RSSが下がる。高い側ではM1のドレイン電圧の余裕がなくなるの。」の場面)
図 58

四国めたん

2つの入力の差には敏感なまま。そこは後で学ぶ負帰還でそろえるの。

動画の画面(「2つの入力の差には敏感なまま。そこは後で学ぶ負帰還でそろえるの。」の場面)
図 59

10まとめ

四国めたん

まとめましょう。差動対は、尾電流源で電流の合計を決めて、差だけを増幅する回路よ。

ずんだもん

能動負荷にすると出力は1本で、利得はgm(ro∥ro)なのだ!

動画の画面(「能動負荷にすると出力は1本で、利得はgm(ro∥ro)なのだ!」の場面)
図 60

ずんだもん

同じように乗るノイズは、差で消えるのだ。片側の出力との違いも、レポートに書くのだ!

動画の画面(「同じように乗るノイズは、差で消えるのだ。片側の出力との違いも、レポートに書くのだ!」の場面)
図 61

四国めたん

次回はオペアンプ入門。今日の差動対が、あの三角の記号の中身になるのよ。

ずんだもん

最後まで読んでくれてありがとうなのだ!