ずんだもんと学ぶアナログ回路

第6回

カスコード:出力抵抗を大きくする

アナログ回路入門シリーズ第6回です。電源電圧はそのままで、もっと利得を上げたい……そこで登場するのがカスコードです。

ソース接地の上にゲート接地を積むと、なぜ出力抵抗が大きくなるのか(シールド効果)を大信号の数値で確かめ、テスト電源を当てた小信号回路から Rout ≈ (gm+gmb)ro2·ro1 を導きます。カスコードカレントミラー、カスコード増幅回路、そして代償としての電圧の余裕(ヘッドルーム)まで扱います。

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  • 四国めたん(解説)
  • ずんだもん(質問)

1導入:電源1.8 Vのまま利得を上げたい

ずんだもん

設計課題がまたピンチなのだ!電源1.8 Vのままで、もっと利得を上げたいのだ。

動画の画面(「設計課題がまたピンチなのだ!電源1.8Vのままで、もっと利得を上げたいのだ。」の場面)
図 1

四国めたん

今日はカスコード。トランジスタを縦に積んで、出力抵抗を大きくしましょう。

動画の画面(「今日はカスコード。トランジスタを縦に積んで、出力抵抗を大きくしましょう。」の場面)
図 2

ずんだもん

よろしくなのだ!今度こそ課題を解くのだ!

動画の画面(「よろしくなのだ!今度こそ課題を解くのだ!」の場面)
図 3

2振り返り:固有利得の限界

四国めたん

振り返りましょう。第4回の能動負荷の利得は、Av=−gm1(ro1∥ro2)だったわね。

四国めたん:利得は、gmと出力抵抗のかけ算。数値は約−35で、固有利得gm·ro(約70)の半分だったわ。

動画の画面(「利得は、gmと出力抵抗のかけ算。数値は約−35で、固有利得gm·ro(約70)の半分だったわ。」の場面)
図 4

四国めたん

今日は、回路の工夫で出力抵抗を上げましょう。カギは前回のゲート接地よ。

動画の画面(「今日は、回路の工夫で出力抵抗を上げましょう。カギは前回のゲート接地よ。」の場面)
図 5

四国めたん

ソースから見た抵抗は約1/gm、ドレインから見た抵抗は大きい。これを使うの。

動画の画面(「ソースから見た抵抗は約1/gm、ドレインから見た抵抗は大きい。これを使うの。」の場面)
図 6

3カスコードの構成

四国めたん

ソース接地のM1の上に、ゲート接地のM2を縦に積むの。これがカスコードよ。

四国めたん:M2のゲートは、一定の電圧Vbに固定。間のノードをXと呼ぶわ。

動画の画面(「M2のゲートは、一定の電圧Vbに固定。間のノードをXと呼ぶわ。」の場面)
図 7

四国めたん

直列だから電流は同じ。M1が入力を電流に変えて、M2がそれを上へ渡すの。

動画の画面(「直列だから電流は同じ。M1が入力を電流に変えて、M2がそれを上へ渡すの。」の場面)
図 8

四国めたん

前回、ゲート接地は電流で入る信号を受け取るのが得意だと言ったわね。それがここで役に立つのよ。

動画の画面(「前回、ゲート接地は電流で入る信号を受け取るのが得意だと言ったわね。それがここで役に立つのよ。」の場面)
図 9

四国めたん

VDD=1.8 V。M1のゲートは第4回のミラーと同じ約0.70 V、Vb=1.25 Vとするわ。

四国めたん:M2の基板はグラウンドで、ソースはX。基板バイアス効果も入れて解くわ。

動画の画面(「M2の基板はグラウンドで、ソースはX。基板バイアス効果も入れて解くわ。」の場面)
図 10

4なぜ出力抵抗が上がるのか

ずんだもん質問

どうして、積むだけで出力抵抗が大きくなるのだ?

動画の画面(「どうして、積むだけで出力抵抗が大きくなるのだ?」の場面)
図 11

四国めたん

Xの電圧VXに注目しましょう。M1のVDSは、VXそのものよ。

動画の画面(「Xの電圧VXに注目しましょう。M1のVDSは、VXそのものよ。」の場面)
図 12

四国めたん

出力を1.0 Vから1.5 Vに上げても、VXは約0.45 Vから約6 mVしか動かないの。

ずんだもん

M1から見ると、VDSがほとんど変わらないのだ!

四国めたん

だからM1の電流も、ほとんど変わらない。M2が、M1をシールドしているのよ。

動画の画面(「だからM1の電流も、ほとんど変わらない。M2が、M1をシールドしているのよ。」の場面)
図 13

ずんだもん質問

でも、M2のVDSは大きく変わるのだ。M2の電流は増えないのだ?

動画の画面(「でも、M2のVDSは大きく変わるのだ。M2の電流は増えないのだ?」の場面)
図 14

四国めたん

VXが少し上がるだけで、M2のVGS=Vb−VXが減って、増えた分を打ち消せるの。

動画の画面(「VXが少し上がるだけで、M2のVGS=Vb−VXが減って、増えた分を打ち消せるの。」の場面)
図 15

四国めたん

出力を1.0 Vから1.5 Vに上げたときの電流の増え方は、M1だけの単体(ゲート0.70 V)なら約4.5%、カスコードでは約0.07%よ。

動画の画面(「出力を1.0Vから1.5Vに上げたときの電流の増え方は、M1だけの単体(ゲート0.70V)なら約4.5%、カスコードでは約0.07%よ。」の場面)
図 16

5小信号回路で出力抵抗を求める

四国めたん

出力抵抗を式で求めましょう。出力にテスト電源vtをつなぐの。

動画の画面(「出力抵抗を式で求めましょう。出力にテスト電源vtをつなぐの。」の場面)
図 17

四国めたん

流れ込む電流をitとするわ。入力の小信号は0、Vbも小信号ではグラウンドね。

動画の画面(「流れ込む電流をitとするわ。入力の小信号は0、Vbも小信号ではグラウンドね。」の場面)
図 18

四国めたん

M1はvgs1=0なので、電流源が消えて、ro1だけが残るわ。

動画の画面(「M1はvgs1=0なので、電流源が消えて、ro1だけが残るわ。」の場面)
図 19

四国めたん

itはM2を通って、すべてro1に流れる。だから、vx=it·ro1ね。

動画の画面(「itはM2を通って、すべてro1に流れる。だから、vx=it·ro1ね。」の場面)
図 20

四国めたん

M2のゲートと基板はグラウンド。だから、vgs2もvbs2も−vxになるの。

動画の画面(「M2のゲートと基板はグラウンド。だから、vgs2もvbs2も−vxになるの。」の場面)
図 21

四国めたん

するとM2の電流源gm2·vgs2+gmb2·vbs2は、−(gm2+gmb2)vx。つまり上向きに(gm2+gmb2)vxを流そうとするわ。

ずんだもん

上向きなのだ?itは下向きに流れているのだ。

四国めたん

そう。だからro2には、itに加えて、電流源の分も下向きに流れるの。

動画の画面(「そう。だからro2には、itに加えて、電流源の分も下向きに流れるの。」の場面)
図 22

四国めたん

vt=vx+ro2[it+(gm2+gmb2)vx]に、vx=it·ro1を入れると、Rout=vt/it=ro1+ro2+(gm2+gmb2)ro2·ro1よ。

動画の画面(「vt=vx+ro2[it+(gm2+gmb2)vx]に、vx=it·ro1を入れると、Rout=vt/it=ro1+ro2+(gm2+gmb2)ro2·ro1よ。」の場面)
図 23

四国めたん

最後の項がずっと大きいから、Rout≈(gm2+gmb2)ro2·ro1ね。

四国めたん:基板を無視すれば、ro1が、固有利得gm2·ro2(約70)倍になった形よ。

動画の画面(「基板を無視すれば、ro1が、固有利得gm2·ro2(約70)倍になった形よ。」の場面)
図 24

ずんだもん

ソースに何がつながるかで、こんなに変わるのだ!

動画の画面(「ソースに何がつながるかで、こんなに変わるのだ!」の場面)
図 25

四国めたん

ええ。前回はソースが接地だったけれど、今回はM2のソースにro1がつながっているの。

四国めたん:VOUT=1.2 Vで、Routは約7.1MΩ。単体のMOSFETのro、約107 kΩの約66倍よ。

動画の画面(「VOUT=1.2Vで、Routは約7.1MΩ。単体のMOSFETのro、約107kΩの約66倍よ。」の場面)
図 26

6VDS–ID特性で比べる

四国めたん

出力の電圧VOUTを横軸にして、単体とカスコードの電流を比べましょう。

動画の画面(「出力の電圧VOUTを横軸にして、単体とカスコードの電流を比べましょう。」の場面)
図 27

ずんだもん

カスコードのほうが、ずっと平らなのだ!

四国めたん

傾きの逆数がRout。グラフの傾きから求めても約7.1MΩで、式と合うわ。

ずんだもん質問

でも、カスコードの電流は、少し小さいのだ?

四国めたん

M1のVDSが、VX(約0.45 V)で止まるからよ。単体の曲線でVDS=0.45 Vのときと同じ電流ね。

四国めたん:それに、平らになり始めるのも、単体の約0.3 Vより右の、約0.75 Vなの。これは後で効いてくるわ。

7カスコードカレントミラー

ずんだもん質問

第4回のカレントミラーの誤差も、これで小さくできるのだ?

四国めたん

ええ。第4回のミラーは、出力のVDSが1.5 Vだと、電流が約7%多かったわね。

動画の画面(「ええ。第4回のミラーは、出力のVDSが1.5Vだと、電流が約7%多かったわね。」の場面)
図 28

四国めたん

入力側にもダイオード接続を2段積み、上のゲートをVbにするの。すると出力側のVXが入力側の下のVGSとほぼ同じになり、下の2つのVDSがそろうのよ。

動画の画面(「入力側にもダイオード接続を2段積み、上のゲートをVbにするの。すると出力側のVXが入力側の下のVGSとほぼ同じになり、下の2つのVDSがそろうのよ。」の場面)
図 29

四国めたん

素子がそろったこのモデルでは、出力が1.5 Vでも、誤差は0.01%未満よ。

四国めたん:これを、カスコードカレントミラーと呼ぶわ。

動画の画面(「これを、カスコードカレントミラーと呼ぶわ。」の場面)
図 30

四国めたん

ただし、上のゲート電圧Vbは2段分のVGSで約1.55 V。出力が約1.0 V以上でないと、平らにならないの。

8カスコード増幅回路

四国めたん

増幅回路にも使いましょう。第4回の能動負荷を、上下ともカスコードにするの。

四国めたん:下はNMOSのM1とM2、上はPMOSのM3とM4。入力はM1のゲートよ。

動画の画面(「下はNMOSのM1とM2、上はPMOSのM3とM4。入力はM1のゲートよ。」の場面)
図 31

四国めたん

PMOSはW/Lを2倍にして、VovをNMOSと同じ約0.3 Vにそろえたわ。

四国めたん:PMOSの基板は、それぞれのソースにつなぐわ。だから基板バイアス効果は出ないの。

動画の画面(「PMOSの基板は、それぞれのソースにつなぐわ。だから基板バイアス効果は出ないの。」の場面)
図 32

四国めたん

利得は、−gm1×出力抵抗。出力抵抗は、下と上のカスコードの並列ね。

動画の画面(「利得は、−gm1×出力抵抗。出力抵抗は、下と上のカスコードの並列ね。」の場面)
図 33

四国めたん

gmやroがそろい、基板効果を省くと、どちらも約gm·ro·ro。並列で半分ね。

四国めたん:だから、Av≈−(gm·ro)²/2になるわ。

動画の画面(「だから、Av≈−(gm·ro)²/2になるわ。」の場面)
図 34

ずんだもん質問

固有利得の2乗なのだ!gm·ro≈70なら、約2500倍なのだ?

動画の画面(「固有利得の2乗なのだ!gm·ro≈70なら、約2500倍なのだ?」の場面)
図 35

四国めたん

動作点のごく近くで計算すると、約−1400。グラフの傾きとも合うわ。

動画の画面(「動作点のごく近くで計算すると、約−1400。グラフの傾きとも合うわ。」の場面)
図 36

四国めたん

目安より小さいのは、各VDSが小さくてroが下がるから。あとで電圧の余裕と一緒に見るわ。

動画の画面(「目安より小さいのは、各VDSが小さくてroが下がるから。あとで電圧の余裕と一緒に見るわ。」の場面)
図 37

ずんだもん

第4回の約−35の、約40倍なのだ!トランジスタを2つ足しただけなのだ。

動画の画面(「第4回の約−35の、約40倍なのだ!トランジスタを2つ足しただけなのだ。」の場面)
図 38

9代償:ヘッドルーム

四国めたん

でも、良いことばかりではないの。代償は、電圧の余裕、ヘッドルームよ。

四国めたん:飽和には、NMOSのVDS、PMOSのVSDが、それぞれVov以上必要。4つで約1.2 Vよ。

動画の画面(「飽和には、NMOSのVDS、PMOSのVSDが、それぞれVov以上必要。4つで約1.2Vよ。」の場面)
図 39

ずんだもん

電源は1.8 Vだから、出力が動ける余裕は、約0.6 Vしかないのだ!

四国めたん

今回のバイアスではM1とM4にも余裕を残したぶん、全部が飽和を保つ出力は約0.76〜1.05 Vだけ(下はM2、上はM3の飽和の境目)。

動画の画面(「今回のバイアスではM1とM4にも余裕を残したぶん、全部が飽和を保つ出力は約0.76〜1.05Vだけ(下はM2、上はM3の飽和の境目)。」の場面)
図 40

四国めたん

第4回の回路は約0.32〜1.37 Vで、幅は約1 V。それが約0.3 Vに減ったの。

四国めたん:利得が約1400もあるから、入力で見るとその幅は約0.34 mVしかないの。入力の直流も精密に決める必要があるわ。

動画の画面(「利得が約1400もあるから、入力で見るとその幅は約0.34mVしかないの。入力の直流も精密に決める必要があるわ。」の場面)
図 41

四国めたん

VDSが小さいと、roも下がるの。目安の約2500に届かなかったのは、そのためよ。

動画の画面(「VDSが小さいと、roも下がるの。目安の約2500に届かなかったのは、そのためよ。」の場面)
図 42

四国めたん

固有利得の小さい先端プロセスほど、電源電圧も低くて積みにくい。そこが悩みどころよ。

動画の画面(「固有利得の小さい先端プロセスほど、電源電圧も低くて積みにくい。そこが悩みどころよ。」の場面)
図 43

10まとめ

四国めたん

まとめましょう。ソース接地の上にゲート接地を積むのが、カスコードよ。

四国めたん:M2がM1をシールドして、出力抵抗は約gm·ro·roに大きくなるの。

動画の画面(「M2がM1をシールドして、出力抵抗は約gm·ro·roに大きくなるの。」の場面)
図 44

ずんだもん

ミラーも増幅回路も良くなるけど、代わりに電圧の余裕が減るのだ!

ずんだもん:課題には、利得だけでなく、電圧の余裕も確かめて書くのだ!

動画の画面(「課題には、利得だけでなく、電圧の余裕も確かめて書くのだ!」の場面)
図 45

四国めたん

次回は差動対。2つの入力の差だけを増幅する回路を見ていきましょう。

動画の画面(「次回は差動対。2つの入力の差だけを増幅する回路を見ていきましょう。」の場面)
図 46

ずんだもん

最後まで読んでくれてありがとうなのだ!