ずんだもんと学ぶアナログ回路

第4回

カレントミラーと能動負荷

アナログ回路入門シリーズ第4回です。設計課題で、RDを大きくしたら増幅しなくなった……その理由と解決策を見ていきます。

直流では電流が決まっていて、小信号では抵抗が大きい負荷=電流源をMOSFETで作ります。ダイオード接続とカレントミラー、roによる誤差と飽和の条件、PMOSを経て、PMOSのカレントミラーを負荷にした能動負荷のソース接地増幅回路を組み立て、回路図の変形から Av = −gm1(ro1∥ro2) を導きます。

YouTube で見る(7:54)
  • 四国めたん(解説)
  • ずんだもん(質問)

1導入:RDを大きくしたら増幅しない?

ずんだもん

設計課題がピンチなのだ!利得を上げようとRDを大きくしたら、全然増幅しないのだ。

動画の画面(「設計課題がピンチなのだ!利得を上げようとRDを大きくしたら、全然増幅しないのだ。」の場面)
図 1

四国めたん

抵抗の代わりに、トランジスタを負荷にしましょう。カレントミラーとPMOSを使うわ。

動画の画面(「抵抗の代わりに、トランジスタを負荷にしましょう。カレントミラーとPMOSを使うわ。」の場面)
図 2

ずんだもん

よろしくなのだ!締め切りまでに直すのだ!

動画の画面(「よろしくなのだ!締め切りまでに直すのだ!」の場面)
図 3

2振り返り:RDを大きくすると

四国めたん

振り返りましょう。ソース接地増幅回路の利得は、Av=−gm(RD∥ro)だったわね。

動画の画面(「振り返りましょう。ソース接地増幅回路の利得は、Av=−gm(RD∥ro)だったわね。」の場面)
図 4

ずんだもん

ボクもRDを大きくすれば、利得も大きくなると思ったのだ。

四国めたん

RDを10倍の50 kΩにしてみましょう。第3回と同じ約0.18 mAの電流なら、電圧降下は約9 Vよ。

動画の画面(「RDを10倍の50kΩにしてみましょう。第3回と同じ約0.18mAの電流なら、電圧降下は約9Vよ。」の場面)
図 5

ずんだもん

電源は1.8 Vしかないのだ!足りないのだ!

動画の画面(「電源は1.8Vしかないのだ!足りないのだ!」の場面)
図 6

四国めたん

抵抗では、小信号の抵抗を大きくすると、直流の電圧降下も大きくなるの。

動画の画面(「抵抗では、小信号の抵抗を大きくすると、直流の電圧降下も大きくなるの。」の場面)
図 7

3電流源を負荷にしたい

四国めたん

欲しいのは、直流の電流は決まっていて、小信号では抵抗が大きい素子よ。

ずんだもん質問

それって、電流源なのだ?

動画の画面(「それって、電流源なのだ?」の場面)
図 8

四国めたん

そう。第3回で、直流電流源は小信号では開放、と言ったわね。

四国めたん:RDを理想電流源に置き換えると、小信号では開放だからRD∥ro=ro。Av=−gm·roで、固有利得そのものよ。

動画の画面(「RDを理想電流源に置き換えると、小信号では開放だからRD∥ro=ro。Av=−gm·roで、固有利得そのものよ。」の場面)
図 9

ずんだもん質問

でも、そんな電流源はどうやって作るのだ?

4ダイオード接続で電流源を作る

四国めたん

飽和領域のMOSFETは、VGSで電流が決まる電流源だったわね。

動画の画面(「飽和領域のMOSFETは、VGSで電流が決まる電流源だったわね。」の場面)
図 10

ずんだもん質問

でも、欲しい電流になるVGSは、どうやって決めるのだ?

四国めたん

そこで、ゲートとドレインをつないでみましょう。これをダイオード接続と呼ぶの。

四国めたん:ここに、外から基準の電流Irefを流し込むわ。

動画の画面(「ここに、外から基準の電流Irefを流し込むわ。」の場面)
図 11

四国めたん

するとMOSFETは、ちょうどIrefが流れるVGSを、自分で作るの。

ずんだもん質問

ゲートとドレインをつないでも、飽和領域なのだ?

動画の画面(「ゲートとドレインをつないでも、飽和領域なのだ?」の場面)
図 12

四国めたん

ええ。飽和の条件はVDS≥VGS−Vth。VDS=VGSだから、VGSがVthを超えていれば必ず成り立つのよ。

四国めたん:たとえばIref=0.1 mAなら、VGSは約0.70 Vになるわ。

5カレントミラー

四国めたん

もう1つのMOSFETを並べて、ゲート同士をつないでみましょう。

動画の画面(「もう1つのMOSFETを並べて、ゲート同士をつないでみましょう。」の場面)
図 13

四国めたん

同じ大きさ(同じW/L)で、同じVGS。だから、右にも同じ電流が流れるの。

四国めたん:鏡に映すようなので、カレントミラー。右の電流をIoutとするわ。

四国めたん:右のW/Lを2倍にすると、Ioutも2倍の0.2 mA。比で電流を決められるの。

動画の画面(「右のW/Lを2倍にすると、Ioutも2倍の0.2mA。比で電流を決められるの。」の場面)
図 14

四国めたん

IDはW/Lに比例するからよ。Vthなどがそろい、左右のVDSが等しいことが前提ね。

動画の画面(「IDはW/Lに比例するからよ。Vthなどがそろい、左右のVDSが等しいことが前提ね。」の場面)
図 15

6roによる誤差と飽和の条件

ずんだもん質問

じゃあ、右側にどんな回路をつないでも、電流はぴったり同じなのだ?

動画の画面(「じゃあ、右側にどんな回路をつないでも、電流はぴったり同じなのだ?」の場面)
図 16

四国めたん

そうとは限らないわ。まず、右のW/Lを左と同じに戻して考えましょう。

動画の画面(「そうとは限らないわ。まず、右のW/Lを左と同じに戻して考えましょう。」の場面)
図 17

四国めたん

左のVDSは約0.70 V。右のVDSは、つなぐ回路しだいで変わるでしょう?

四国めたん:右のVDSを1.5 Vにすると、Ioutは約0.107 mA。7%ほど多くなるわ。

動画の画面(「右のVDSを1.5Vにすると、Ioutは約0.107mA。7%ほど多くなるわ。」の場面)
図 18

四国めたん

このグラフの傾きが、第2回で見た1/ro。IoutがIrefと一致するのは、VDSが左右で等しいときだけよ。

動画の画面(「このグラフの傾きが、第2回で見た1/ro。IoutがIrefと一致するのは、VDSが左右で等しいときだけよ。」の場面)
図 19

四国めたん

右のVDSが小さすぎても困るの。0.2 Vだと飽和領域を外れて、Ioutは約0.080 mAよ。

四国めたん:だから右も飽和領域で使うの。今回はVov=0.70−0.4=0.3 Vだから、VDSが約0.3 V以上ね。

7PMOSをくわしく

ずんだもん質問

このミラーを、RDのところに入れれば完成なのだ?

動画の画面(「このミラーを、RDのところに入れれば完成なのだ?」の場面)
図 20

四国めたん

負荷はVDDと出力の間。NMOSで作ると、ソースが出力側になるから、出力が動くとVGSも動いて電流が一定にならないの。

動画の画面(「負荷はVDDと出力の間。NMOSで作ると、ソースが出力側になるから、出力が動くとVGSも動いて電流が一定にならないの。」の場面)
図 21

四国めたん

そこで、第1回でちらっと見たPMOSを使うわ。ソースをVDD側に置けるの。

動画の画面(「そこで、第1回でちらっと見たPMOSを使うわ。ソースをVDD側に置けるの。」の場面)
図 22

四国めたん

記号をおさらいしましょう。ソースの矢印が内向きで、ゲートに丸。ソースが上ね。

動画の画面(「記号をおさらいしましょう。ソースの矢印が内向きで、ゲートに丸。ソースが上ね。」の場面)
図 23

四国めたん

第1回のとおり、ゲートをソースより低くするとオン。だから電圧はVSGで考えるの。

四国めたん:VSGが|Vth|を超えると、電流はソースからドレインへ、上から下に流れるの。

四国めたん:式はNMOSと同じ形。VSGとVSD、|Vth|で書き、電流はSからDを正にとるの。

動画の画面(「式はNMOSと同じ形。VSGとVSD、|Vth|で書き、電流はSからDを正にとるの。」の場面)
図 24

ずんだもん質問

大きさも、NMOSとまったく同じなのだ?

四国めたん

正孔は電子より動きにくいの。このモデルでは、同じW/LでKを半分の1 mA/V²にするわ。

動画の画面(「正孔は電子より動きにくいの。このモデルでは、同じW/LでKを半分の1mA/V²にするわ。」の場面)
図 25

四国めたん

PMOSでもカレントミラーは作れるわ。NMOSのミラーを、上下に裏返した形ね。

動画の画面(「PMOSでもカレントミラーは作れるわ。NMOSのミラーを、上下に裏返した形ね。」の場面)
図 26

8能動負荷のソース接地増幅回路

四国めたん

では、PMOSのミラーを負荷にしましょう。トランジスタの負荷を、能動負荷と呼ぶの。

動画の画面(「では、PMOSのミラーを負荷にしましょう。トランジスタの負荷を、能動負荷と呼ぶの。」の場面)
図 27

四国めたん

下のM1が増幅するNMOS。上のM2が負荷で、M3がIrefを受けるダイオード接続よ。

四国めたん:VDD=1.8 V、Iref=0.1 mA。M2とM3は同じ大きさ。基板はどれもソースにつなぐわ。

動画の画面(「VDD=1.8V、Iref=0.1mA。M2とM3は同じ大きさ。基板はどれもソースにつなぐわ。」の場面)
図 28

四国めたん

VOUTは、M1とM2の電流が等しくなる点で決まるの。2つの特性を重ねましょう。

動画の画面(「VOUTは、M1とM2の電流が等しくなる点で決まるの。2つの特性を重ねましょう。」の場面)
図 29

ずんだもん

2本の曲線の交点が、動作点なのだ!

四国めたん

VOUTを0.9 Vにするには、VINは約0.70 V。電流は約0.1 mAよ。

四国めたん:VINを動かしたときのVOUTがこのグラフ。第3回の抵抗負荷(点線)より、ずっと急でしょう?

動画の画面(「VINを動かしたときのVOUTがこのグラフ。第3回の抵抗負荷(点線)より、ずっと急でしょう?」の場面)
図 30

9小信号回路図への変形と Av

四国めたん

利得を求めましょう。第3回と同じ手順で、回路図を変形していくわ。

四国めたん:前提として、M1もM2も飽和領域よ。出力が、M1のVovの約0.3 Vから、VDDからM2のVovを引いた約1.4 Vまでの間ならそうなるわ。

動画の画面(「前提として、M1もM2も飽和領域よ。出力が、M1のVovの約0.3Vから、VDDからM2のVovを引いた約1.4Vまでの間ならそうなるわ。」の場面)
図 31

四国めたん

手順1。VDDとVINの直流分は短絡。Irefの電流源は開放ね。

動画の画面(「手順1。VDDとVINの直流分は短絡。Irefの電流源は開放ね。」の場面)
図 32

ずんだもん質問

Irefを開放したら、M2のゲートは浮いてしまわないのだ?

四国めたん

M3は第3回で見たダイオード接続。小信号では約1/gm3の抵抗になって、M2のゲートをグラウンドにつなぐの。

動画の画面(「M3は第3回で見たダイオード接続。小信号では約1/gm3の抵抗になって、M2のゲートをグラウンドにつなぐの。」の場面)
図 33

四国めたん

そこへ信号は入らないから、ゲートの小信号は0。vsg2=0ね。

四国めたん:手順2。M2の小信号モデルは、gm2·vsg2=0なので、ro2だけが残るの。

ずんだもん

電流源の負荷は、小信号ではro2という抵抗に見えるのだ!

動画の画面(「電流源の負荷は、小信号ではro2という抵抗に見えるのだ!」の場面)
図 34

四国めたん

M1は第3回と同じ。gm1·vinの電流源と、ro1の並列ね。

四国めたん:手順3。ro1もro2も、出力とグラウンドの間にあるから、並列よ。

動画の画面(「手順3。ro1もro2も、出力とグラウンドの間にあるから、並列よ。」の場面)
図 35

四国めたん

RDがro2に変わっただけ。Av=−gm1(ro1∥ro2)になるわ。

動画の画面(「RDがro2に変わっただけ。Av=−gm1(ro1∥ro2)になるわ。」の場面)
図 36

10固有利得との関係と数値例

ずんだもん質問

理想電流源のときのgm·roと比べると、どうなのだ?

四国めたん

ro1=ro2なら、並列の値はroの半分。だからAv=−gm·ro/2ね。

動画の画面(「ro1=ro2なら、並列の値はroの半分。だからAv=−gm·ro/2ね。」の場面)
図 37

四国めたん

負荷の電流源も本物のトランジスタだから、ro2の分だけ利得が下がるのよ。

動画の画面(「負荷の電流源も本物のトランジスタだから、ro2の分だけ利得が下がるのよ。」の場面)
図 38

四国めたん

動作点(VIN=0.70 V、VOUT=0.9 V)での数値は、gm1が約0.65 mA/V。ro1とro2は、どちらも約108 kΩよ。

四国めたん:並列で約54 kΩ、Avは約−35。gm1·ro1の約70の、ちょうど半分ね。

動画の画面(「並列で約54kΩ、Avは約−35。gm1·ro1の約70の、ちょうど半分ね。」の場面)
図 39

ずんだもん

グラフの傾きとも合うのだ。第3回の約−4の、約9倍なのだ!

動画の画面(「グラフの傾きとも合うのだ。第3回の約−4の、約9倍なのだ!」の場面)
図 40

四国めたん

ただし、バイアスも前回と違うの。Vovが0.4 Vから約0.3 Vに下がったので、固有利得gm·ro≈2/(λVov)も約70に増えているわ。

動画の画面(「ただし、バイアスも前回と違うの。Vovが0.4Vから約0.3Vに下がったので、固有利得gm·ro≈2/(λVov)も約70に増えているわ。」の場面)
図 41

11動作点の決め方

四国めたん

でも注意もあるの。VINが10 mV変わるだけで、VOUTは約0.35 Vも動くわ。

動画の画面(「でも注意もあるの。VINが10mV変わるだけで、VOUTは約0.35Vも動くわ。」の場面)
図 42

四国めたん

2本の特性がどちらも平らだから、交点が大きく動いてしまうのね。

四国めたん:実際は、出力のずれを入力へ戻して打ち消す、負帰還という方法で動作点を決めるの。くわしくは後の回でね。

動画の画面(「実際は、出力のずれを入力へ戻して打ち消す、負帰還という方法で動作点を決めるの。くわしくは後の回でね。」の場面)
図 43

12まとめ

四国めたん

まとめましょう。カレントミラーは、ダイオード接続で作ったVGSで電流を写す回路よ。

四国めたん:PMOSは、電圧と電流の向きを読み替えれば、NMOSと同じ形の式で扱えるの。

動画の画面(「PMOSは、電圧と電流の向きを読み替えれば、NMOSと同じ形の式で扱えるの。」の場面)
図 44

ずんだもん

能動負荷のソース接地増幅回路は、Av=−gm1(ro1∥ro2)なのだ!

動画の画面(「能動負荷のソース接地増幅回路は、Av=−gm1(ro1∥ro2)なのだ!」の場面)
図 45

ずんだもん

能動負荷で利得を上げられたのだ。飽和の条件も書いて、課題を提出するのだ!

四国めたん

次回は、ソースフォロワとゲート接地。3つの基本増幅回路を比べましょう。

ずんだもん

最後まで読んでくれてありがとうなのだ!